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第九回 実在気体の関係式

9.1 内部エネルギーとエンタルピーの関係

一般に実在気体を考えると,内部エネルギーやエンタルピーは温度だけで決まるのではなく,体積や圧力が変化すると変わりうる.比内部エネルギー$u$と比エンタルピー$h$の変化は以下のようにあらわされる.

$\displaystyle du=c_v dT+\Bigl\{T\Bigl(\frac{\partial p}{\partial T}\Bigr)_v-p \Bigr\}dv$ (1)
$\displaystyle dh=c_p dT+\Bigl\{v-T\Bigl(\frac{\partial v}{\partial T}\Bigr)_p \Bigr\}dp$ (2)

等温過程においては,$dT=0$とすると,

$\displaystyle \Bigl(\frac{\partial u}{\partial v} \Bigr)_T=T\Bigl(\frac{\partial p}{\partial T} \Bigr)_v-p$ (3)
$\displaystyle \Bigl(\frac{\partial h}{\partial p} \Bigr)_T=v-T\Bigl(\frac{\partial v}{\partial T} \Bigr)_p$ (4)

気体の状態方程式から,$u$$h$を求めることができる.

9.2 Joule-Thomson効果

多孔質の障壁のようなスロットルを通して,ある一定の圧力から別の圧力に膨張させた場合,低圧力側の温度が圧力差に比例して低下する.この効果をジュール・トムソン(Joule-Thomson)効果という. 図1にその様子を示す.このとき,気体に起きる変化は断熱変化であるため$q=0$である.左側の気体は$-p_1(0-V_1)$の仕事を受けるのに対し,右側の気体は,$-p_2(V_2-0)$の仕事を受ける.このため,気体が受けた仕事は$p_1V_1-p_2V_2$となる.このとき,内部エネルギーを$U$とすると,断熱過程であるため,

\begin{displaymath}
U_2-U_1=w=p_1V_1-p_2V_2
\end{displaymath} (5)

となる.これを整理すると,

\begin{displaymath}
U_2+p_2V_2=U_1+p_1V_1 \hspace{5mm}すなわち,\hspace{5mm}H_2=H_1
\end{displaymath}すなわち, \begin{displaymath}
U_2+p_2V_2=U_1+p_1V_1 \hspace{5mm}すなわち\hspace{5mm}H_2=H_1
\end{displaymath} (6)

したがって,膨張はエンタルピーの変化なしに起こるため,等エンタルピー過程である.このとき,圧力差に対する温度変化をジュール・トムソン係数といい,以下の式で表わされる.

\begin{displaymath}
\mu=\Bigl(\frac{\partial T}{\partial p}\Bigr)_H
\end{displaymath} (7)

一般的には,実在気体に対してはジュール・トムソン係数は以下のようにあらわされる.

\begin{displaymath}
\mu=\Bigl(\frac{\partial T}{\partial p}\Bigr)_H=\frac{1}{c_p}\Bigl\{T\Bigl(\frac{\partial V}{\partial T}\Bigr)_p-V\Bigr\}
\end{displaymath} (8)

ある圧力において$\mu=0$となる温度を逆転温度というが,ジュール・トムソン効果により冷却を行うためには気体の初めの温度が最高逆転温度以下である必要がある.また,式(1)において,$du=0$とすると,気体の自由膨張におけるジュール係数と呼ばれる以下の関係式が得られる.

\begin{displaymath}
\Bigl(\frac{\partial T}{\partial v}\Bigr)_u=\frac{1}{c_v}\Bigl\{p-T\Bigl(\frac{\partial p}{\partial T}\Bigr)_v\Bigr\}
\end{displaymath} (9)

図 1 ジュール・トムソンの膨張
\includegraphics[width=.65\linewidth]{JouleThomson.eps}

9.3 その他の熱力学的物性値

温度$T$,圧力$p$および体積$V$の間の微係数により定義される代表的な状態量として以下のような物性値がある.

体積膨張係数   $\displaystyle 体積膨張係数\hspace{30mm}\beta=\frac{1}{V}\Bigl(\frac{\partial V}{\partial T} \Bigr)_p \hspace{60mm}$ (10)
等温圧縮率   $\displaystyle 等温圧縮率\hspace{33mm}k_T=-\frac{1}{V}\Bigl(\frac{\partial V}{\partial p} \Bigr)_T \hspace{60mm}$ (11)
断熱圧縮率   $\displaystyle 断熱圧縮率\hspace{33mm}k_S=-\frac{1}{V}\Bigl(\frac{\partial V}{\partial p} \Bigr)_S \hspace{60mm}$ (12)
等温弾性係数   $\displaystyle 等温弾性係数\hspace{30mm}E_T=\frac{1}{k_T}=-V\Bigl(\frac{\partial p}{\partial V} \Bigr)_T \hspace{60mm}$ (13)
断熱弾性係数   $\displaystyle 断熱弾性係数\hspace{30mm}E_S=\frac{1}{k_S}=-V\Bigl(\frac{\partial p}{\partial V} \Bigr)_S \hspace{60mm}$ (14)

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