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第五回 熱力学第二法則

5.1 サイクルと効率

系がある状態から出発し,何らかの状態変化を行い,再び元の状態に戻るとき,その過程をサイクルという.熱力学第一法則により,系が外部に行う仕事$W$は,系が受ける熱量$\delta Q$とすると,

\begin{displaymath}
W=\int \delta Q
\end{displaymath} (1)

一般的にサイクルは図1,2に示される熱機関と作業機械に分かれる.

  • 熱機関
    高温熱源から得たエネルギーを仕事に変換する.熱効率$\eta_{th}$は以下のようにあらわされる.

\begin{displaymath}
\eta_{th}=\frac{W}{Q_1}
\end{displaymath} (2)

  • 作業機械
    外部から与えた仕事により熱エネルギーを移動させる.高温熱源へ熱を移動させる冷凍機と低温熱源へ移動させるヒートポンプが基本的にあり,それらの成績係数$\epsilon_r$$\epsilon_h$は以下のようにあらわされる.

$\displaystyle \epsilon_r$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{Q_2}{W}=\frac{Q_2}{Q_1-Q_2}$ (3)
$\displaystyle \epsilon_h$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{Q_1}{W}=\frac{Q_1}{Q_1-Q_2}=\epsilon_r+1$ (4)

5.2 カルノーサイクル

熱力学の最も基本的なサイクルとしてカルノーサイクル(Carnot cycle)がある.カルノーサイクルは以下の四つの可逆過程からなる.

  • A$\to$B 等温膨張 温度$T_h$の高温熱源から熱量$q_h$をもらう.
  • B$\to$C 断熱膨張 温度$T_h$から低温熱源の温度$T_c$まで膨張して温度が下がる.
  • C$\to$D 等温圧縮 温度$T_c$の低温熱源へ$q_c$の熱量が放出される.
  • D$\to$A 断熱圧縮 温度$T_c$から高温熱源の温度$T_h$まで圧縮して温度が上がる.

カルノーサイクルでは熱効率は,以下のようにあらわされる.

\begin{displaymath}
\eta=\frac{q_h-q_c}{q_h}=1-\frac{q_c}{q_h}=1-\frac{T_c}{T_h}
\end{displaymath} (5)

実際のエンジンは熱力学的に可逆となりえず,カルノーサイクルの熱効率よりも小さくなる.

図1 熱機関 図2 冷凍機 図3 カルノーサイクルのp-V線図

5.3 熱力学温度

可逆カルノーサイクルの効率が作動流体によらず,高温熱源の温度$T_h$と低温熱源の温度$T_l$から決まることから熱力学温度$\theta$を定義することができる.高温熱源からもらう熱を$Q_1$,低温熱源に捨てる熱を$Q_2$とすると,高温熱源の熱力学的温度を$\theta_0$のとき低温熱源の熱力学的温度$\theta$を以下のように決定することができる.

$\displaystyle \eta=1-\frac{Q_2}{Q_1}=1-\frac{\theta}{\theta_0}$ (6)
$\displaystyle \frac{Q_2}{Q_1}=\frac{\theta}{\theta_0}$ (7)

5.4 熱力学第二法則

 仕事を100%熱に変換することは可能であるが,熱を100%仕事に変換することはできない.これを熱力学第二法則という.

 熱力学第二法則はエントロピーという状態量によって表現される.エントロピーは系の中の分子的な乱れの尺度を示す.熱力学的な定義ではエントロピー変化は以下のようにで意義される.

\begin{displaymath}
dS=\frac{dq_\mathrm{rev}}{T}
\end{displaymath} (8)

熱力学第二法則はエントロピーを用いると次のように表わされる.

\begin{displaymath}
\Delta S_\mathrm{tot}>0
\end{displaymath} (9)

5.5 クラウジウスの積分

式(7)より,温度$T_1$$T_2$で作動する可逆カルノーサイクルにおいては,熱源からもらい,捨てる熱量を$Q_1$$Q_2$とすると,

\begin{displaymath}
\frac{Q_1}{T_1}=\frac{Q_2}{T_2}
\end{displaymath} (10)

もらう熱量を正,捨てる熱量を負として取り扱うと,

\begin{displaymath}
\frac{Q_1}{T_1}+\frac{Q_2}{T_2}=0
\end{displaymath} (11)

すなわち,可逆カルノーサイクルにおいては,

\begin{displaymath}
\oint \frac{\delta q}{T}=0
\end{displaymath} (12)

となる.任意の可逆サイクルは微小なカルノーサイクルの集合と考えられるので,外部から得る熱量を$\delta q$とすると,すべての可逆サイクルにおいて

\begin{displaymath}
\oint \frac{\delta q}{T}=0
\end{displaymath} (13)

この積分をクラウジウス(Clausius)の積分という.不可逆変化においては可逆サイクルと比べると熱効率が小さくなるため,

\begin{displaymath}
1-\frac{Q_2}{Q_1}<1-\frac{T_2}{T_1}
\end{displaymath} (14)

前と同様に$Q$の正負を考えれば,

$\displaystyle \frac{Q_1}{T_1}+\frac{Q_2}{T_2}<0$     (15)

任意の不可逆サイクルに対してクラウジウスの積分は以下のようになる.

\begin{displaymath}
\oint \frac{\delta q}{T}<0
\end{displaymath} (16)

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