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第十五回 ランキンサイクル

サイクル中の作動物質が気相と液相とを経過する場合を気液サイクルという.蒸気タービンや冷凍機などの基本サイクルはこれに属する.理想気体では近似することはできないため,蒸気表や各種線図を利用する.この節においても圧力を$p$,体積を$V$,温度を$T$,エントロピーを$S$$U$を内部エネルギー,$Q$を系が受ける熱量,$W$を系が外部に及ぼす仕事,$m$を質量,$C_V$を定容熱容量( $=m c_v=\frac{m }{\kappa-1}R$),$C_p$を定容熱容量( $=m c_p=\frac{m \kappa }{\kappa-1}R$)とし,添え字は状態を表すこととする.

15.1 ランキンサイクル(Rankine Cycle)

ランキン(Rankine)サイクルは図1で示されるような構成の蒸気原動機の基準サイクルである.給水ポンプで圧縮され,圧縮過程は液相の状態で行われる.その後,ボイラで高圧縮水を定圧的に加熱し,状態2$'$で飽和液,3$'$で飽和水蒸気となり,4で過熱蒸気となる.その後,高圧蒸気をタービンにおいて断熱膨張させ,復水器により定圧的に冷却され液体となる.

図1 蒸気原動機の概略図

図2に$pv$線図を,図3$Ts$線図を示す.ランキンサイクル中の過程を以下に説明する.

  • $1\to2$ 断熱圧縮過程

$pv$線図における面積12$p_2p_1$は,給水ポンプを用いて水をボイラに送り込む仕事,すなわちポンプの工業仕事を表しており,水の比体積はほとんど変化しないとし, $v_2 \simeq v_1$とすると,熱力学第一法則により $\delta q=dh -vdp$より,断熱過程であるから,系が受ける工業仕事$w_{t12}$

\begin{displaymath}
w_{t12}=h_2-h_1\simeq v_1(p_2-p_1)
\end{displaymath} (1)

この時,水の比体積は$v_1=0.001$m$^3$/kg位であり,仮に10MPaまで昇圧されるとしても $0.001\times10\times 10^6=1.0\times 10^4$J/kg程度であり,タービン仕事と比較すればほとんど無視できるほど小さい.

  • $2\to4$ 定圧加熱過程

状態2から4の過程でボイラによって加熱されるが,これは定圧過程であり,加熱量$q_{24}$はエンタルピー変化に等しいため,

\begin{displaymath}
q_{24}=h_4-h_2
\end{displaymath} (2)

ここでの$h_4$および$h_1$はルックアップテーブルを用いることで値を引用し,計算を行う.

  • $4\to5$ 断熱膨張過程

加熱蒸気がタービンで断熱膨張することで,仕事が得られる.この時,断熱変化であるため,系が受ける仕事$w_{t45}$ $\delta q=dh -vdp=0$より,

\begin{displaymath}
w_{t45}=h_5-h_4
\end{displaymath} (3)

  • $5\to1$ 定圧冷却過程

復水器により定圧的に冷却され,水蒸気は凝縮し,液体となる.定圧過程のため,系が受け取る熱量はエンタルピー変化に等しい.

\begin{displaymath}
q_{51}=h_1-h_5
\end{displaymath} (4)

以上より,ランキンサイクルの熱効率$\eta$は外部に行う工業仕事 $w_t=-w_{t12}-w_{t45}$より,

$\displaystyle \eta=\frac{w_t}{q}=\frac{-w_{t12}-w_{t45}}{q_{24}}=\frac{(h_1-h_2)+(h_4-h_5)}{(h_4-h_2)}=1+\frac{h_1-h_5}{h_4-h_2}=1+\frac{q_{51}}{q_{24}}$     (5)

ポンプ仕事を無視して, $h_2 \simeq h_1$とすると,

\begin{displaymath}
\eta=1+\frac{h_1-h_5}{h_4-h_1}
\end{displaymath} (6)

\includegraphics[width=\linewidth]{sabathe-pv.eps} \includegraphics[width=\linewidth]{sabathe-ts.eps}
図2 ランキンサイクルの$pV$線図 図3 ランキンサイクルの$TS$線図

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