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第十二回 蒸気の状態変化

12.1 蒸気の状態変化

蒸気の状態変化においても,一般の気体の場合と同様に熱力学第一法則にしたがって変化する.理想気体においては容易に状態量の変化を計算することができたが,湿り蒸気の場合,それらの算出は困難となり,熱力学線図や数表を利用して求めることとなる.ここでは圧力$p$,比体積$v$,温度$T$,比エントロピー$h$,比内部エネルギー$u$とし,飽和液の状態量には$'$を飽和蒸気の状態量には$''$を付けてあらわし,添え字の数字は図中の点を表すこととする.

12.2 定圧変化

湿り蒸気の状態変化を考える.図1に示されるように,点1$\to$点2に変化する場合,一般の気体と同様に$pv$線図上を$v$軸に平行に移動する.一般の気体との違いは湿り蒸気区間を変化する場合には等温変化である.乾き度$x_1$から$x_2$に変化したとすると,水蒸気の蒸発潜熱を$L$とすると,定圧過程であるため,系が受け取る熱量$q_{12}$はエンタルピー変化に等しいために以下のようにあらわされる.

\begin{displaymath}
q_{12}=h_2-h_1=(x_2-x_1)L
\end{displaymath} (1)

内部エネルギーの変化は,

$\displaystyle u_2-u_1$ $\textstyle =$ $\displaystyle \{(1-x_2)u'+x_2 u''-(1-x_1)u'-x_1 u'' \}=(x_2-x_1)\varphi$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle h_2-p_2 v_2-(h_1-p_1 v_1)=h_2-h_1-p(v_2-v_1)$ (2)

ここで$\varphi$は内部蒸発熱

外部に対して行う仕事は$w_{12}$

\begin{displaymath}
w_{12}=p(v_2-v_1)=p\{(1-x_2)v'+x_2 v''-(1-x_1)v'-x_1 v'' \}=(x_2-x_1)p(v''-v')=(x_2-x_1)\psi
\end{displaymath} (3)

ここで,$\psi$を外部蒸発熱( $\psi=p(v''-v')$)とする.

\includegraphics[width=\linewidth]{p-const-pv.eps} \includegraphics[width=\linewidth]{p-const-ts.eps}
図1 定圧変化のpV線図 図2 定圧変化のTS線図

12.3 定容変化

ボイラーなどのように密閉容器内に液体をいれて過熱する場合は定容変化となる.図3と4にこのときの$pv$線図と$Ts$線図を示す.湿り蒸気を加熱するにつれて点 $1_b \to 2_b \to 3_b$あるいは点 $1_a \to 2_a \to 3_a$と変化する.一般の気体と同様に,定容変化の場合$v$の変化がないため,外部に行う仕事は0である.よって,熱力学第一法則より,系が受け取る熱量は内部エネルギーの変化と等しい.

\begin{displaymath}
q_{12}=u_2-u_1=h_2-p_2 v_2-(h_1-p_1 v_1)=h_2-h_1-(p_2-p_1)v
\end{displaymath} (4)

定容変化であるため,外部に行う仕事は0である.また,湿り蒸気においては,$v$が一定であるため

$\displaystyle v_1$ $\textstyle =$ $\displaystyle v_1'+x_1(v_1''-v_1')=v_2=v_2'+x_2(v_2''-v_2')$ (5)
$\displaystyle x_2$ $\textstyle =$ $\displaystyle x_1\frac{v_1''-v_1'}{v_2''-v_2'}+\frac{v_1'-v_2'}{v_2''-v_2'}$ (6)

となり,乾き度が変化する.また,比体積$v$が臨界体積$v_c$より小さい時は過熱を続けると点3$_b$で液体となる.

\includegraphics[width=\linewidth]{v-const-pv.eps} \includegraphics[width=\linewidth]{v-const-ts.eps}
図3 定容変化のpV線図 図4 定容変化のTS線図

12.4 等温変化

等温変化は図5と6のようにあらわされる.点$1\to 2$に変化するとする.湿り蒸気においては等温過程ににより,エントロピーの変化から熱量を求めることができる.熱力学第一法則より

\begin{displaymath}
q_{12}=u_2-u_1+\int_1^2 pdv=T(s_2-s_1)
\end{displaymath} (7)

湿り蒸気においては,相平衡が成り立つため,等温変化は定圧変化とおなじになる. よって,

\begin{displaymath}
q_{12}=T(s_2-s_1)=h_2-h_1
\end{displaymath} (8)

外部に行う仕事は,熱力学第一法則により,

$\displaystyle w_{12}$ $\textstyle =$ $\displaystyle q_{12}-\Delta u_{12}=T(s_2-s_1)-\{h_2-p_2v_2-(h_1-p_1v_1)\}$ (9)
  $\textstyle =$ $\displaystyle T(s_2-s_1)-(h_2-h_1)+(p_2v_2-p_1v_1)$ (10)

湿り蒸気内においては,定圧変化と同じとなるため, $w_{12}=p(v_2-v_1)$となる.

\includegraphics[width=\linewidth]{t-const-pv.eps} \includegraphics[width=\linewidth]{t-const-ts.eps}
図5 等温変化のpV線図 図6 等温変化のTS線図

12.5 断熱変化(等エントロピー変化)

断熱変化における湿り蒸気の変化の様子を図7と8に示す.図8で示されるように,等エントロピー変化となるため,$Ts$線図上では$T$軸に平行に変化する.エントロピーが一定であるため,

\begin{displaymath}
s_1=s_1'+x_1(s_1''-s_1')=s_2=s_2'+x_2(s_2''-s_2')
\end{displaymath} (11)

よって乾き度が変化する.乾き度は

\begin{displaymath}
x_2=x_1\frac{s_1''-s_1'}{s_2''-s_2'}+\frac{s_1'-s_2'}{s_2''-s_2'}
\end{displaymath} (12)

系が受け取る熱量は断熱であるため$q_{12}=0$
系が外部に及ぼす仕事は熱力学第一法則により $w_{12}=-\Delta u_{12}$

\begin{displaymath}
w_{12}=u_1-u_2=h_1-p_1 v_1 -(h_2-p_2 v_2)
\end{displaymath} (13)

蒸気の等エントロピー変化は複雑であり,理想気体の場合のように簡単な関係式では表わされないが,温度,圧力の狭い範囲での等エントロピー変化においては,

\begin{displaymath}
pv^k=\mathrm{const}
\end{displaymath} (14)

$k$を断熱指数といい,圧力と温度の関数であり,

\begin{displaymath}
k=-\frac{v}{p\Bigl(\frac{\partial v}{\partial p} \Bigr)_s}
\end{displaymath} (15)

\includegraphics[width=\linewidth]{adv-pv.eps} \includegraphics[width=\linewidth]{adv-ts.eps}
図7 断熱変化のpV線図 図8 断熱変化のTS線図

12.6 等エンタルピー変化

蒸気が弁や細管を通るとき,エンタルピーが一定に保たれ,圧力,温度が低下する.図9に圧力$p_1$の湿り蒸気が,絞りを通過し,圧力$p_2$の過熱蒸気になった場合を示す.等エンタルピー変化のため,蒸発潜熱を$L$とすると,

\begin{displaymath}
h_1=h_1'+x_1L_1=h_2
\end{displaymath} (16)

以上より,状態1の蒸発潜熱$L_1$と,絞り後の過熱蒸気のエンタルピー$h_2$,絞り前の飽和液のエンタルピー$h_1'$が既知であると,状態1の乾き度$x_1$を求めることができる.

\begin{displaymath}
x_1=\frac{h_2-h_1'}{L_1}
\end{displaymath} (17)

図9 等エンタルピー変化での$hs$線図
\includegraphics[width=.32\linewidth]{h-const-hs.eps}

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