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第十一回 水蒸気,湿り空気

11.1 相変化

ある純物質があるとする.図1の$1\to2\to3\to4$と定圧線上で変化するとする.最初は固体であり,徐々に加熱すると融解し,液体が生じる,液相と固相が共存する部分は等温変化であり,2においてすべてが液体となる.臨界点,b,2を含む線を飽和液線という.2$\to$3においては,気相と液相が共存し,ここでも等温変化となる.この間は湿り蒸気とよばれる.さらに加熱すると,3ですべての液体が蒸発する.この臨界点,3を結ぶ灰色の線を飽和水蒸気線という.3$\to$4とさらに水蒸気を加熱すると,比体積はどんどん大きくなり,過熱蒸気と呼ばれる.

\includegraphics[width=\linewidth]{pv-vandel.eps} \includegraphics[width=\linewidth]{phase-d.eps}
図1 ファンデルワ-ルスの状態方程式図2 相図の例

11.2 Clausius-Clapeyronの式

相境界線上では2相が平衡状態であるため,定圧では2相間でGibbsの自由エネルギーが等しい.そのため,Gibbsの自由エネルギーの変化も0となる.今,液相のGibbsの比自由エネルギー$g'$気相を$g''$とすると,$dg'=dg''$となる.$dg=vdp-sdT$となるため,液相には$'$気相には$''$をつけて表すと,

\begin{displaymath}
v'dp-s'dT=v''dp-s''dT
\end{displaymath} (1)

またこの式から,

\begin{displaymath}
\frac{dp}{dt}=\frac{s''-s'}{v''-v'}
\end{displaymath} (2)

相変化は等温,定圧過程であるため,相変化によるエントロピー変化は潜熱を$L$とすると,

\begin{displaymath}
s''-s'=\frac{h''-h'}{T}=\frac{L}{T} 
\end{displaymath} (3)

以上より潜熱に関す る関係式,

\begin{displaymath}
L=(v''-v')T\frac{dp}{dT}
\end{displaymath} (4)

この式をClapeyronの式という.これによって,相境界を求めることができる.相図の例を図2に示す.今,気体の比体積は液体の比体積と比較して非常に大きいため, $v''-v'\simeq v''$であるとし,気体に対して理想気体の状態方程式が成り立つとすると, $v''=\frac{RT}{p}$となる.これを式(3)に代入すると,以下の式が得られる.

\begin{displaymath}
\frac{d \ln p}{dT}=\frac{L}{RT^2}
\end{displaymath} (5)

この式をClausius-Clapeyronの式といい,これから蒸気圧を求めることができる.

11.3 蒸気の状態方程式

蒸気に対しても実在気体で説明した状態方程式が成り立つ.ここではファンデルワールス(van der Waals)の状態式で説明を行う.ファンデルワールスの状態方程式は以下のようにあらわされる.

\begin{displaymath}
\Bigl(p+\frac{a}{v^2} \Bigr)(v-b)=RT
\end{displaymath} (6)

ここでの定数a,b,Rは前述したとおり,臨界圧力を$p_c$,臨界温度を$T_c$,臨界比体積を$v_c$とすると,

\begin{displaymath}
a=3p_c v_c^2,b=\frac{v_c}{3},R=\frac{8 p_c v_c}{3 T_c}
\end{displaymath} (7)

また,換算圧力を$p_r=p/p_c$,換算温度を$T_r=T/T_c$,換算容積を$v_r=v/v_c$とすると,物質に依存しない以下の換算状態方程式が得られる.

\begin{displaymath}
\Bigl(p_r+\frac{3}{v_r^2} \Bigr)\Bigl(v_r-\frac{1}{3} \Bigr)=\frac{8}{3}T_r
\end{displaymath} (8)

11.4 湿り蒸気

図1における点1,4間で考える.点2は飽和液,点3は飽和蒸気と先ほど示した.この点$2\to3$で挟まれる領域に存在する気相,液相が共存したものを,湿り蒸気という.このとき,蒸気(気相)の質量分率を$x$とする.比体積$v$,比エントロピー$s$,比エンタルピー$h$とすると,この温度における飽和液および飽和蒸気の状態量に$'$および$''$をつけると,湿り蒸気の状態量は以下のように与えられる.

$\displaystyle v=(1-x)v'+xv''$ (9)
$\displaystyle s=(1-x)s'+xs''$ (10)
$\displaystyle h=(1-x)h'+xh''$ (11)

また,これらの物性値がわかっていると,例えば,$v$が既知であれば,乾き度を式(9)から求めることができる.

\begin{displaymath}
x=\frac{v-v'}{v''-v'}
\end{displaymath} (12)

湿り蒸気は状態変化によって乾き蒸気の質量分率が変化するため,気液両方の状態量を求める必要があり,解析的に状態量を求めることが困難である.また,過熱蒸気に関しても,理想気体で近似できる領域は良いが,高圧になると実在気体として取り扱う必要があり,熱力学の一般関係式から状態量変化を求める必要がある.理想気体と違い非常に複雑になるため,これらの値を求める際には,飽和液および乾き蒸気の温度,圧力に対する表を参照して計算することが多い.

11.5 湿度

湿り空気は乾き空気と水蒸気の混合気体である.この湿り空気中の水蒸気の混合割合を示す値を湿度という.湿度にはいくつかの種類がある.

11.5.1 絶対湿度

絶対湿度absolute humidityは,乾いた空気1kg中に含まれる水蒸気の質量が$x$のとき,1+$x$kgの混合気体が絶対湿度$x$の湿り空気となる.

11.5.2 相対湿度

一般的に,湿度としてなじみが深いのは相対湿度であろう.湿り空気の温度における飽和水蒸気圧を$p_s$とすると,相対湿度$\phi$は湿り空気中の水蒸気の分圧$p_w$と飽和水蒸気圧$p_s$の比で表わされる.

\begin{displaymath}
\varphi =\frac{p_w}{p_s}=\frac{\rho_w}{\rho_s}=\frac{v_w}{v_s}\simeq\frac{x}{0.622+x}\frac{p}{p_s}
\end{displaymath} (13)

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